音楽理論は「暗記」じゃない。音とつながった瞬間に、弾ける世界が広がる
目次
はじめに|理論はわかるのに、なぜ弾けない?

「ピアノはそれなりに弾けるし、音大入試レベルの理論も一通り勉強した。テストを受ければきっと高得点。でも、いざ好きな曲を耳コピしようとするとコードがわからない。楽譜がないと何も弾けない……」
こうした悩みを抱えている方は、実は少なくありません。驚くことに、絶対音感を持っている方や、現役のピアノの先生であっても、同じ壁にぶつかっているケースをよく目にします。
でもこれは、才能の問題ではありません。
私がこれまで多くの学習者を見てきて感じるのは、「頭の中の知識」と「実際に鳴っている音」が、別々に存在してしまっている状態の方がとても多い、ということです。
音楽理論は本来、暗記するためのものではなく、音を理解し、自由に扱うための道具です。
この記事では、理論を「知っている状態」から「使える状態」に変えるための考え方をお伝えします。
※詳しいお話は、こちらの動画でも解説しています。
1. 知識と音がつながっていない、という問題
理論のテストで高得点が取れても、演奏で使えない理由はシンプルです。
それは、頭の中で「音」と「理屈」が結びついていないから。
例えば、ダイアトニックコードの「2番目のコード」を考えてみましょう。
- クラシックの教育現場では「Ⅱ度」
- ポピュラー音楽では「Ⅱm(ツーマイナー)」
私は普段、Ⅱmという呼び方を使っています。それは、このコードが持つ“マイナーの性格”を意識してほしいからです。
もちろん「Ⅱ度」と覚えていても間違いではありません。ただしその場合、
「2度=短三和音で、こういう響きを持つ」というところまで、音で理解できている必要があります。
ハ長調で言えば、ⅡmはDmです。
でも「Dmだから押さえる」という記号的な反応だけでは、実際の演奏にはつながりません。
大切なのは、
- このコードがスケールの中でどんな役割を持っているのか
- どんな響きとして感じられるのか
これを音で"わかっている状態”になっているかどうかです。
知識が「響き」として認識され、瞬時に指へ伝わる。
この回路がつながって、はじめて理論は生きたものになります。
私がよく言う
「ショパンより、ハッピーバースデーをパッと弾ける力」
というのは、まさにこの状態のことなのです。
2. 最短ルートは「歌うこと」|感覚で覚える理論
理論を記号のまま終わらせず、自分のものにするために、私が一番おすすめしている方法があります。
それは、自分の声で歌うことです。
声を出すと、頭の骨や体全体が振動します。
さらに、筋肉を使うことで、記憶の定着率は一気に高まります。
実践方法
- ピアノでコード(例:C)を弾く
- そのコードの土台となるルート音(根音=ド)を声に出して歌う
- 好きな曲のコード進行(例:C→F→G)に合わせて、ルートの動きを追いながら歌う
これを繰り返していくと、
コードの響きの輪郭や進行の流れが、頭ではなく身体に刻み込まれていきます。
3. 「緊張と緩和」を身体の感覚で覚える
音楽理論の中心にある「ドミナントモーション(例:G7→C)」を、
文字情報だけで処理していないでしょうか。
本当に覚えてほしいのは、そこにある心の動きです。
たとえば、お辞儀の合図。
「ジャーン(気をつけ)→ジャーン(礼)→ジャーン(直れ)」

これは、
- エネルギーが高まる
- 移行する
- ほっと解決する
という、音楽そのものの流れとよく似ています。
- お辞儀の途中:緊張感を含んだドミナント
- 直れ:力が抜けて安心するトニック
リトミックでは、こうしたハーモニーの移行を全身で表現します。
「G7からCへ」という理論を、
ギュッと力が入って、ふっと解放される感覚と一緒に覚えてみてください。
この感覚が入ると、理論は一気に身近になります。
4. 理論とは「聞こえている音に名前をつけること」
なぜ、たくさんの用語を覚える必要があるのでしょうか。
それは、名前がつくことで、脳がその音をはっきり認識できるからです。
たとえば色の名前。
「シアン」という言葉を知らなければ、「なんとなく青っぽい色」で終わります。
でも名前を知った瞬間、その色は記憶に残る存在になります。
音楽も同じです。
- テンションコードを「9thの音」と認識できると、響きの個性が聞こえる
- 名前があるから、頭の中でその音を再生できる(内的聴覚)
名前をつけることで、
あいまいだった音が「知っている音」に変わっていくのです。
5. 「いつもの流れ」を知ると、音楽はシンプルになる
理論を学ぶ最大のメリットは、
音楽の基本パターンという地図を手に入れられることです。
基本のコード進行を音で覚えていると、
- 「ここはよくある流れだな」とすぐ判断できる
- 「あ、ここはちょっと違うぞ」と変化に気づける
という視点が持てるようになります。
逆に、基本を知らないと、
すべてが例外に見えてしまい、暗記の山になってしまいます。
地図を持っているからこそ、
「ここだけが特別なんだ」と、音楽が整理されて見えるのです。
まとめ|理論は、音を理解するための相棒
音楽理論は、あなたを縛るルールではありません。
迷子にならないための目印であり、
聞こえている音をつかまえるための補助線のようなものです。
理論を勉強で終わらせず、
ぜひ「音」と一緒に扱ってみてください。
そうすると、
次に音楽がどこへ向かおうとしているのかが、
少しずつ自然に感じられるようになっていきます。
「楽譜があれば弾けるけど、耳コピしてパパッと弾くことができない」
「理論も学んでみたけど、どう音に結びつけたらいいのかわからない」
「自分の場合はどうなんだろう?」
そんな方のために、
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今のレベルやこれまでの経験をお聞きしながら、
理論と演奏がどこで離れてしまっているのかを一緒に整理します。
「次に何を意識すればいいか」が見える時間になるはずです。

